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写真のためではない写真【写真と生きる】

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2018年5月24日

IMA「ゼロ号」への想い

26IMA Vol.0 2012 spring/summer LIVING WITH PHOTOGRAPHY 特集 写真集の現在

[黒田]
太田さんはIMAの雑誌を作る前から、アートとか写真を取り扱った雑誌をやられていたんですか?

[太田]
そもそもアマナでやる以前から、 「アート雑誌を作りたい」 と思っていたんです。前職であるエスクァイア時代にアート担当だった流れで、写真特集を何度か担当していまして。。ビジネスパートナーである上坂真人と一緒にアマナにアート雑誌を出したいと持ち込んだ時に、社長から「アマナは写真の会社なので、アートの中でも写真に特化したものにしてほしい」と言われてIMAが始まりました。
エスクァイアで働いている時に4、5回写真特集の担当をしたので、IMAを担当する事になった時にはこんな形で繋がるんだなあと感慨深く思いましたね。それでその過去の経験を反芻しながらゼロ号を作りました。

[黒田]
なるほど、経験が生きているんですね。

[太田]
その時のアマナの考え方としては、日本のアート系の写真家は中々それだけでは食べていけない。アマナは40年近くコマーシャル写真の業界でやってきて、創業者が写真家出身だということもあり、写真に対する思い入れを持っているからこそ、「この状況を変えたい」という思いを抱いたんですね。日本には良い写真家がいっぱい居るのに、世界で存分に活躍できていないというのはおかしい、 アート系の写真家たちがきちんと食べていける状況を作りたい という思いが根底にあります。

[黒田]
それは写真家からして本当に有難い事ですね(笑)

[太田]
アマナでは、IMAが始まる1年と少し前に 「アマナコレクション」 を始めてまして。若手を中心にアート写真を購入していくという、これは事業というよりはある種の芸術・文化のメセナ活動ですけれども。
今年8年目ですが、約800点ほどのコレクションになっています。さらに、プラチナプリントの アマナサルト もスタートしていた背景もあって。アート写真にまつわる様々な活動をスタートし始めていた時期だったんですけど、写真メディアはこんなに早くやる計画があったかどうかはわかりませんが、タイミングよくスタートすることになったわけです。
そもそも世界のカメラブランドの9割以上が日本企業ですし、カメラ愛好家のハイアマチュアの方もすごく多いんです。とはいえ、鑑賞する人はすごく少なくて、写真を買う人もごくわずか。CP+とかも大盛況じゃないですか。
でも、若手の写真家展なんてなかなか観客が動員できないわけで。
そういう環境を変えていきたいという思いがあります。写真を撮る人のためのカメラ雑誌はいっぱいあるから、 写真を見る人のための雑誌 を作ろうと、それでスタートしたのがIMAなんです。Living with Photographyというのは、創刊以来ずっと掲げてるポリシーなんですが、同時に 「写真をゆっくり読む雑誌」 というコピーも付けていました。

[黒田]
あ、それ見たことあります。

[太田]
はい。写真を読み解いてその面白さを知っていただくような雑誌を作ろうと思ってるんです。
実はIMAを創刊する、その少し前に遡るんですが、オランダに FOAM という写真雑誌があるんですね。その雑誌が日本にローンチしたいというので、その日本版の編集をしないかというオファーがありまして、私がフリーだったときに手伝ったことがあったんですよ。彼らも日本は写真好きな人が多いから、こういう雑誌いいんじゃないかと思ってローンチしようとしたわけです。
日本語訳の小冊子をインサートするだけでしたが、その編集を1人でやりまして、その過程でFOAMを何冊も読み込んだんですね。そしたらそれがすごく面白くていい雑誌なんですよ。こういうの日本で作りたいなって思ったんですけど、でもアートフェアでは思ったほど売れずに、日本では時期尚早といった感じになってしまった経緯がありました。
あの頃はFOAMみたいな雑誌が日本にあったらいいなぁと思ってたんですけど、結果的に自分で作ることになったというのも因果ですね。

[黒田]
なるほど。それはまさに点が繋がった瞬間ですね。導かれているような感じすらします(笑)

[太田]
そうですね。エスクァイアでも写真特集の担当をしていました。FOAMをやるということも偶然の流れで、その後アマナで写真雑誌を立ち上げることになったわけですから、過去15年ぐらいの間の活動すべてが、ゆるやかに「今」 に向かっていたという感覚ですね…。

[黒田]
本当そうですね。今お話お伺いしてる中で、いろいろ気になっていたところが勝手に解決した部分もあるんですけれど。想像していた成り立ちやポリシーがお話から伝わってくるので、ものすごい納得感があります。 「LIVING WITH PHOTOGRAPHY」 というテーマからも分かるように、撮る人ではなく写真を読む人向けの雑誌だなあというのはすごい感じていて。まさにでしたね。
その点はあとでもまたお伺いしたいんですけども。

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