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きっかけは、ただ知りたいという探究心だった

きっかけは、ただ知りたいという探究心だった

2018年3月29日

絶景を撮るモチベーション

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[黒田]
ちょうど俺と1年遅れの感じだね。俺は2014年にいろいろやってみたくって、やりたいことやって、ちょっと振り返って違うなってなって、だんだん落ち着いていったというか、1年の周期でそういうのは動いてる感じがするね。
でもそのまま話を進めると、きょんきょんの場合は、2015年に技術をインプットして、2016年には世界中の絶景を撮りに行ってるわけなんでしょ。中国とか。その絶景を撮りに行こう!っていうモチベーションはどこから来ているのかな?

[Kyon.J(きょんきょん)]
それは本当に偶然の出来事があったんだけど中国って旧正月あるじゃん、2016年の旧正月はやることもないし、実家のある中国に帰ろうかなと思って帰ったの。
そうしたら親がどこかへ旅行に行きたいって言ったから、ちょうどその時カメラの撮り方もちょっとだけ現像のやり方も分かった所だったし、例えば風景とか撮ってみようかなってちょっとだけ思ってたのもあって、じゃあせっかくだし撮影ができて親も楽しめる観光スポットはどこだろうって考えると 「桂林」 という所が良いかなと思って決めたの。そこは実家から車で行ける距離だったから、写真も撮れるし家族も楽しめるし、船も乗れるみたいな山と湖が楽しめる所だったからちょうど良いかなって。

[黒田]
うん、適度なところだね。

[Kyon.J(きょんきょん)]
それで、向かっていたんだけど現地に着いたのは夜11時半位。ローカルの人も結構いる中で「山撮りたいんです。どこに行けばいいですか」って質問したの。それで「じゃあこの山をこういう風に登っていけば撮れるよ」とか、そういった情報を結構色んな人に聞いて周って、山に登る前日にリサーチしたの。
その結果、すごく朝早く出発しないと良い写真が撮れない事が分かった。最初は親と一緒に行こうとしてたんだけど「日の出撮りたいから4時に出発」って言ったら「行かねーよ」って言われて(笑)

[黒田]
一人で行って来いって?(笑)

[Kyon.J(きょんきょん)]
そう(笑)だから一人でリュック背負って向かったの。

[黒田]
それは車で向かったの?

[Kyon.J(きょんきょん)]
ローカルのバイク?みたいなの乗ってるおじさんがいたから、お金を払って山の麓に連れて行ってもらって、そこから登り始めたんだけど初日は何も撮れなかったんだよね。良い場所も見つけられなかったし、余計な道走っちゃったのかもしれない。それで結局着いたらもう朝9時頃で全然日の出も何もないし、でも「場所は分かった!」と思って前向きになれた。しかも、そこに風景カメラマンが2~3人いたの。

[黒田]
日の出の時間とっくに過ぎていてもカメラマンが居たんだね。

[Kyon.J(きょんきょん)]
多分、それが初めて中国出身のローカルカメラマンと接点があった瞬間で、そこで良いスポットについて色々と教えてもらった。「どこに行けば絶対良い写真が撮れるか」を聞いて、次の日に再チャレンジして、そのまた次の日はそのカメラマンから教えてもらったスポットに直接行って撮ったんだけど、その時撮った縦の一枚がゆくゆく開催した個展にも出せた一枚なんだよね。天気も何もかも全部偶然にベストなものが撮れた。

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[黒田]
へ~!!この霧が出てるやつ。

[Kyon.J(きょんきょん)]
そうそう、これがその写真。一応太陽は毎日ここから差し込むらしいんだけど、2月、3月、4月だか月別で太陽の位置が変わったりはするんだよね。でもそのとき全くそういう知識も無くって、あとで聞いたらこういうようなシーンは中々撮れないらしいって分かったんだけど。風と水と空気の温度との差で霧が出ていて、そう行った状況の中で太陽が雲の後ろから出てきたわけ。まさに奇跡的なタイミングで太陽が差し込んできて、すごく綺麗だった。

[黒田]
天候にも恵まれてたんだ。

[Kyon.J(きょんきょん)]
天候的にも恵まれてたし、しかも、これを撮った時間はすでに日の出は終わってるわけ。太陽が昇ってからは皆帰っちゃったんだけど、自分は着いたのが遅め組だったから、せっかく登ってきたしホテルに戻っても寝るだけだから、一人でそこでシャッターチャンスが来るまで粘ってたの。でも粘ってたら、湖で船がうろうろしてるっていうのが見えて、この船がちょうどこの影のとこに行ってもらえたら絵的に良いなあと思って、行ってくれないかなってずっと祈ってた。でも全然行ってくれなくて、船は止まってるんだよ(笑)

[黒田]
その船に向かって、「動け!」と(笑)

[Kyon.J(きょんきょん)]
動けと。もう本当にずっと待ってて、そしたらずーっと見てるうちに、急に下の方から船が動いてきたわけ。下から2艘がきて、これだ!って思って船が来てからずっと連写。30枚位撮った中の一番好きなのがさっきの1枚。構図と光が差し込んだ陰影と光の境目に2艘が入ってる、それがとても良かった。

[黒田]
へ~。そのときはカメラの機材とかも結構揃えてたの?

[Kyon.J(きょんきょん)]
SONYのα7Sとα7。レンズは16mm、35mm、70mm、200mmのGかな、絞りはF4のもの。一応2015年頑張って買ったの。

[黒田]
じゃあそれを持って行って、3日間で色々と撮って、それで世界が変わったの?

[Kyon.J(きょんきょん)]
撮った時点で世界が変わったというよりかは、現像したときに、今までのスタイルで本当はコントラストとか、彩度高めとか、同じ風に現像しようと思ったんだけど、1回したら初めて「これは違う!」って思った瞬間かな。今まで撮った日本の写真とかは、違和感を感じていなかったんだけど、この写真は初めて「絶対これじゃない」って感じて、何が違うのか分からないんだけど、とにかくこれは違う、私の思い描く桂林じゃないって思ったの。

[黒田]
うんうん。

[Kyon.J(きょんきょん)]
そして思ったのが、中国の 「水墨絵」 というものがあるんだけど、私は昔水墨が結構好きで、中国の水墨の師匠とか何人か有名な人の作品を見ていたんだけどその事を思い出して、もしかしたら水墨風にすればしっくり来るかもって閃いた。
でも水墨風にするにはどうすれば良いのかは分からないから、彩度をモノクロにしてみた。でもそれだと何かつまらなくて、色々試行錯誤していたら自分の「ちょうど良いかも」っていう瞬間があったの。その繰り返しで自分なりに現像方法を試していってさっきの写真にたどり着いたの。そこで、完全なモノクロではなく光を感じられるように黄色味を残す事も覚えて、それで初めて一般によく出回っているような「彩度の高い写真」に囚われなくていい、彩度が低くたって良いんだって、写真に対する考え方がちょっと変わたんだよね。

[黒田]
話を聞いていて思ったけど、「こういう絵になってほしい」っていう意志が初めて芽生えて、それをどういう手法で現像するのかっていう本来あるべき、写真表現みたいなところに目覚め始めたんだろうね。

[Kyon.J(きょんきょん)]
そうだね。

[黒田]
今までは同じ延長線上で彩度上げてコントラスト上げてっていうのが、自分の見せたいものとか、自分の感動を表現する手法という感じで、それを見せにいったというかね。それはあるべき変化というか、そこに至るまでの成長がものすごく早いよね。

[Kyon.J(きょんきょん)]
たぶんこの場所がすごい良かったと思う。桂林でよかった。

[黒田]
光もね。すごい神に愛されてるよね。神の子。

[Kyon.J(きょんきょん)]
運が良かったと思うよ。本当に今でも奇跡だと思う位。だって日が昇ったら風景カメラマンって基本的にみんな帰るから遅い時間なんて誰も居ないわけ。自分も帰ろうと思ってたんだけど、何故そこで粘っていたのかって今でも不思議なんだ。一体どういう気持ちだったのか今となっては思い出せないんだけど、その時もうちょっと居ようっていう気持ちがあったから、このシーンを見る事が出来たわけで、逆にみんなは帰っちゃったからこのシーンを撮る事は出来てないんだよね。

[黒田]
すごいね。

[Kyon.J(きょんきょん)]
そうそう、あの写真をアップした後に桂林の地元の人から、これいつ撮ったの?みたいに聞かれた(笑)それはあなたたちが帰った後だよっていう(笑)それから皆このシーンを狙いに結構長く山の上で待っていたっていうのは後で聞いたんだけど。

[黒田]
じゃあある種のブームを作ってるんだ(笑)すごいね。

[Kyon.J(きょんきょん)]
でも他の写真だったら完成したものは違ったと思うんだよね。例えば、もし太陽に色がもっと出ていたりフレアがあったりもっと派手な部分があれば、この色を出したいとかそういう気持ちのほうが勝ったかもしれないし、でも何にも無かったからこそ落ち着いた色味になった気はする。

[黒田]
何にもない写真の中に、これをどうにか絵にしないといけないっていう気持ちが多分あって、それもあるから納得のいく表現が出来るまで突き詰めようという気持ちに持っていけたのかもしれないね。
その旧正月の2月に桂林を撮りにいってから、また更に中国を周っているわけだよね?

[Kyon.J(きょんきょん)]
2016年は合計7回、2017年は3回、だからこの2年間は10回中国を撮りに行ってるね。出張も含めたらもっと行ったかもしれないけどね。

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