2018年4月26日
南米チリの美しい港町・バルパライソで初めてワインと遭遇したのは、確か1958年のことです。振り返れば60年近くワインと関わってきましたが、今まで「ワイン閣下」に裏切られたことは一度たりともありません。もちろん、時には管理の問題などで酸化していたり、古過ぎて飲み頃を逃してしまったボトルに遭遇した経験はありますが、それは我々の扱い方の問題。むしろ、何度もワイン閣下を裏切ってしまい、申し訳なく思ったりもします。
60年前の私には、ワインの知識などひとかけらもありませんでした。なのに、長い航海のあとの1杯のグラスは、疲れきった身体を優しく包み込んで全身を隅々まで癒してくれました。知識よりも先に、感動があったのです。
冒頭で「ワイン閣下」と書いたのは、葡萄酒の感動を覚えて以降、心の中でそう呼ぶようになったからです。私は、まもなく齢80歳を迎えますが、この年齢まで健康で過ごしてこられたのは、ワイン閣下殿の成分の恩恵にあずかっていることも一因と信じているのです。
ワインとともに見逃せないのが、チーズです。チリやアルゼンチンでは「ケーソ」と呼ばれるごく当たり前の食材ですので、滞在時には現地の方々に倣ってよく食べました。おかげで今も好きなのですが、割と本気で「もしもチーズを知らなかったら、私の人生はもっと短かったかも知れないなあ」などと思ったり。
これは芝居がかった言い回しではありません。もしかしたら、チーズ&ワインのコンビネーションは、本当に私を健康維持に貢献してくれているものと考えています。たとえば、チーズに含まれるレンネット(酵素)の働きが、抗酸化の役目を果たしてくれているのではないか、と。現にフランスでは、レンネットに消化を助ける力を期待してか、メイン料理の後・デザートの前にチーズを楽しむのが一般的なのですから。
幸い、私はここまで病気ひとつせず、夜な夜なワイン閣下との謁見を楽しみ続けることができました。というわけで、私はワインを愛でる同志の皆様に「チーズの素晴らしさ」を説いて回っている次第なのです。
さて、その我が国でも「ワインと健康」がよく語られるようになりました。しかしながら、いかにワイン閣下と言えども、度を超えて飲み過ぎれば単なるアルコール飲料。「適量」という言葉がありますが、これは本当に難しいですし、また守れないんですよね。
アルコールが体内で消化されることで生じるアセトアルデヒド(代謝産物)は、場合によっては肝臓のミトコンドリアにダメージを与えることもあります。こうなると、抗酸化狙いのはずが、逆に身体を錆びつかせてしまう原因にもなるのですね。ワイン自体に問題はないのですが、ひとつ罪があるとすれば「旨過ぎる」ことでしょうか。そのあまりの美味ゆえに、私たちはたびたびラインを遥かにオーバーしては、近年は「万病の源」との認識も広がる酸化ストレスに晒されてしまうわけです。
どこまでが適量か、どこからが飲み過ぎか。ワイン愛好家の宿命とも言うべき難しい判断ですが、WHO(世界保健機関)が定義する「世界的な基準」では、ワイングラスで2杯くらいが適量とされています。ワインに美味しさだけでなく健康サポート力も期待するのであれば、ひとまず守っておきたいラインということになります。
さて、ここからは朗報をひとつ。世界が認めたスイスの医療財団TIMA財団の理事長マーカス・マチューシカ伯爵と、岐阜大学生命科学総合研究支援センター抗酸化研究部門特任教授の犬房春彦先生の共同研究によって開発されたサプリメントをご存じでしょうか。世界特許を取得した「スパリブ SUPALIV」は、飲み過ぎで生じる二日酔いの原因ともなる有害物質・アセトアルデヒドと戦う役割を果たしてくれるというのです。
マチューシカ伯爵と犬房先生、お二方とも個人的に親しくさせていただいています。素晴らしい友人たちが身を粉にして共同研究に臨む姿を遠巻きに見守っておりましたので、彼らのたゆまぬ努力が大きな成果を実らせたことには、改めて敬意を表したいと思います。
この製品は、コエンザイムQ10やビタミンCなど8種類の原料から作られているそうです。すべて天然成分で化学薬品は不使用ということで、身体の防御力を高める成分が大量に含まれるとされるブロッコリーとともに、私も愛用中です。スパリブがどこまで効果をあげてくれているのかは分かりませんが、「個人の感想」的には「ぜひお試しいただきたいサプリ」ということになります。ご覧の通り、すこぶる健康・すこぶる快調にて、この原稿を書いておりますので。
そのあまりの旨さから、味覚的な愉しみに集中してしまいがちなワインですが、こうした新たな視点を導入すると、ワイン閣下と過ごす人生はさらに充実したものになるはず。最後に、こちらも日頃からお世話になっている人生の師、奈良県の信貴山のとある高僧の言葉をご紹介して、この稿を閉じたく存じます。
「酒に適量なし、酔心に適量あり」
著者:熱田貴(あつたたかし)
経歴:昭和13年7月7日、千葉県佐原市に生まれる。外国にあこがれ(株)日之出汽船に勤務し、昭和38年まで客室乗務員として南米、北米を回りワインに出会う。39年にホテルニューオータニ料飲部に。44年~47年までフランス・ボルドー、ドイツ・ベルンカステル、オーストリア・ウィーン、イギリス・エジンバラにてワイナリー、スコッチウィスキー研修。48年ホテルニューオータニ料飲部に復職。平成3年に東京麹町にワインレストラン「東京グリンツィング」を開業。平成9年に日本ソムリエ協会会長に就任。「シュバリエ・ド・タストヴァン」「コマンドリー・デュ・ボンタン・ドゥ・メドック・エ・デ・グラーヴ」「ドイツワイン・ソムリエ名誉賞」など海外の名誉ある賞を数々受賞。その後も数々の賞を受賞し、平成18年に厚生労働省より「現代の名工」を受賞、平成22年度秋の褒賞で「黄綬褒章」を受賞。現在は一般社団法人日本ソムリエ協会名誉顧問、NIKI Hillsヴィレッジ監査役などを務めている。
★ワイン航海日誌バックナンバー
【1】もう1人いた「ワインの父」
【2】マイグラスを持って原産地に出かけよう
【3】初めてワインに遭遇した頃の想い出
【4】冬の楽しみ・グリューワインをご存知ですか?
【5】仁木ヒルズワイナリーを訪ねる
【6】酒の愉しみを詠んだ歌人の歩みを真似てみる。
【7】シャンパーニュ地方への旅
【8】エルミタージュの魔術師との出逢い
【9】ワインと光
【10】ワインから生まれた名言たち
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2024年09月27日 発行
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