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撮り続けた先にあるもの

撮り続けた先にあるもの

2017年11月23日

写真と出会った原点

[黒田]
まさに我々がやってる行為というか、普通の方々とかからすると、理解の外側にあるよねっていうところにも触れたいですね。
極端な話、撮影をしにその子を撮りに行こうよって、お出かけ自体もよくわからなかった部分があって。
写真をはじめるまではカメラはついでだったのに、今では当たり前のように写真の為に出かけるようになって。
そうしたら今度は、笠井さんや他の写真家の方々のように何においてもカメラを持ち歩いている方の存在も知って(笑)
その一方で世の中にはやはり、家族写真だったり、インスタ映えだったり、記念のためだったりが主流な気もします。色んな楽しみ方があって、中にはこうして深くハマっている人間もいるという、写真はそれだけの魅力を持ってるんだっていうところ、魔力と言ってもいいかもしれないですけど、もうちょっと掘り下げたいですね。
笠井さんの場合って、仕事にされる前からもけっこう写真は撮られてたんですか?

[笠井]
そんな長くは撮ってない。
一応学校の選択科目で暗室教室というのがあって、それを選択したのがはじまりかな。

[黒田]
そうなんですね。今と違ってフイルムだと、ある程度参入障壁というか、写真をはじめる難易度って高いですよね。当時から日常を撮ったりとか、楽しんだりとかはしてたんですか?

[笠井]
実際、当時のことって曖昧だから、あれだけど。
便宜上僕がいつも言ってるのは、写真を暗室でやるようになって、写真って面白いなっていう感覚はあったんだけど、じゃあ何を撮ればいいのかっていうのは自分の中に何もなかったし、ましてはそれで表現をしようっていうのもなかったし。
ただ、暗室作業をするためには写真がないと成立しないからっていうのがあって。ものすごい打算で、じゃあ日記にすりゃいいじゃん、ってなったのよ。日記を撮ればいいじゃん、ってなったの、僕の中で。

[黒田]
日記そのものが写真ですか?

[笠井]
日記として写真を撮ればいいじゃんって思ったの。
それは僕の中で絵日記と何も変わらなくて。絵日記なんて作品になりうると思わないじゃん。
だからそういう意味では、アートとか表現とかそういうことではなくて、本当に日記としてだったらやれるじゃんっていう感覚、本当、打算。で、これも日記、これも日記みたいな、なんでもOKじゃんっていうことで、自分の中でとりあえず日記として写真を撮り始めたの。その頃はネオパン400プレストで撮ってたんだけど、それはあくまで暗室で焼くための言い訳みたいな。

[黒田]
素材としてですね。

[笠井]
そう。そういうとこから僕は始めて、そこから「じゃあどんな写真家が世の中にいるんだろう」って、そこではじめてピンときて。もしかしたらメイプルソープとかは知ってたかもしれないけど、例えば荒木さんっていう人がいるのは知らなくて。
ふと、本屋に行けば写真集があるだろうと思って行ってみた。
その情景はすごい覚えてるんだよね。そのときのことを。エスカレーターで下りていって、右側に本屋があるっていうところまで、全部。

[黒田]
結構細かく覚えてるもんですね。

[笠井]
そこはね、本当によく情景として覚えてるんだけど。行ってぱっと見たら、荒木経惟、荒木経惟・・・ってすごい本があって。
そのときにはじめて、こういう人がいるんだと思って、ぱっと中をのぞいて見たら日記だったの。「写狂人日記」っていう日記をやってて、僕の中ではそれが、雷が落ちるくらいの衝撃だった。
要するに、自分が適当に打算で、これでいいやって考えてやってたことを、まじまじとやってる人がいると思って。しかもちゃんと本になっていて、何冊もそれがあって、ばっと見たら、当時って荒木さん結構、日記でもいろんな有名人をばんばんそこに入れてたから。
今はそういうのあんまりしなくなっちゃったんだけど、やっぱり、肖像権だなんだっていろいろ言われるようになったからあれなんだけど。当時は容赦なくいろんな人が写ってて、ヌードはあるし。それで最初、あれ僕と同じことやってるって思ったんだけど、ふとなんか、この人はなんなんだってなって、そっから一気に荒木さんにもう魅入っちゃって。
その頃ってまだ91年とか2年とか、ちょうど「センチメンタルな旅・冬の旅」とか、「冬へ」とか、「東京物語」とか、当時の写真集は全部言えるけど、「平成元年」とか「写狂人日記」とか。それで、プリントするためのお遊びの日記でやってたのが、こんな人もいるのかと衝撃だった。そこからすごい荒木さんのことが気になってしょうがなくて。で、当然荒木さんを見るってことはエロのこともあるし。あ、エロもやってるみたいな感じだし。だから、全部がそこから。

[黒田]
それで世界が広がったんですね。

[笠井]
広がったっていうか、それはもう衝撃だよね。

[黒田]
しかも、何気なしに自分がやっていたものと遠からずというか、っていうところもあったんですかね。

[笠井]
でも当時、自分がやってたことを荒木さんがやってるっていうのは、最初は「あれ、同じことやってる」って思ったかもしれないけど、すぐにその考えは改まった。

[黒田]
運命的なものがありますね。

[笠井]
そうなんだよね、今思えばね。

[黒田]
人の参考にはまったくならない。(笑)

[笠井]
ならない。実は何もならない。(笑)

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