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50歳を超えて拠点を移す、桃井かおりの”働き方改革”

50歳を超えて拠点を移す、桃井かおりの”働き方改革”

2020年4月23日

日本映画界を代表する女優としてリスペクトを集める桃井かおり氏。54歳でアメリカに拠点を移して以降は、海外作品に出演しながら自ら脚本を手がける監督作を発表するなど、新たな地平を切り開く活動でも注目を浴びている。

この春は、石橋蓮司氏の18年ぶりの主演作として話題を集める『一度も撃ってません』に出演。ロスから帰国した彼女に映画の見どころを伺いつつ、新天地で得た「新たな働き方」を含めた近況を聞いた。

|坂本順治さんが監督を務める今作は、キャスト陣が豪華ですね。

そうなんですよ。これだけの数の主役級を脇に回せるのは、石橋蓮司主演作ならではでしょう。もし蓮司さんじゃなかったら、監督もここまでのメンバーを集めようとは思わなかったんじゃないかな。

|桃井さんの目からご覧になった俳優・石橋蓮司の魅力は?

私が最初に芝居を経験した時にご一緒させていただきまして。彼の背中を見て育ちましたが、今もお付き合いさせていただいてますので「いつまでも慕う背中」という感じかな。どの角度から見ても洒落た男だなあと惚れ惚れします。

|撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?

監督をはじめ、スタッフ全員がとても気持ちよく働ける現場でしたね。個人的にも付き合いが長い、大好きな俳優さんばかりで。私が映画人生をかけて貯金してきた人間関係が結実したように感じました。

|俳優人生と言えば、来年で50周年ですね。

人から言われて気づきました(笑)。人間、半世紀も同じことに取り組んでいると少しは上手になるものですが、それだけではダメで。今回の作品でも積み重ねの大切さを表現したくて、監督に「ライトは要らないので老いを撮ってください」と頼んだんです。本当にそう撮られて、腹が立ちましたけど(笑)。

|海外に拠点を移された時には、多くのファンが驚きました。

睡眠もとれないほど多忙な生活では、いつか「偽物の私」が剥がれ落ちるかも、と怖くなりましてね。日本にいたら仕事が来てしまうし、逆にオファーがないと不安になるから何でも引き受けてしまうし…という循環から抜けようと。自分なりの「働き方改革」を実行したんです。

|大きなご決断ですね。

メキシコの映画で中国人の役をやったり、スペイン語のセリフを話したり。経験したことがない困難の連続ですが、むしろチャンスでもあるかな、と。

|「新しい働き方」の手応えはいかがですか?

無名ですし、年齢も年齢ですし、想像以上に大変でした。でも、「ようやく名前を覚えてくれた!」というワクワク感が楽しいんですよね。悔しい思いをすることもありますが、私は下積みの時期がなかったので、それも新鮮で。自分を変えたい方は、海外で仕事をしてみるのもいいと思いますよ…なかなか過酷で(笑)。

 

<出演情報>
阪本順治 監督作品
『一度も撃ってません』

1

【近日公開】
TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか
全国ロードショー !

詳細はこちら

監督/阪本順治  脚本/丸山昇一
配給/キノフィルムズ
出演/石橋蓮司、大楠道代、岸部一徳、桃井かおり、佐藤浩市、豊川悦司、江口洋介、妻夫木聡 ほか


俳優 桃井かおりさん
文学座付属演劇研究所を経て、1971年の『愛ふたたび』、石橋蓮司主演の『あらかじめ失われた恋人たちよ』で映画デビュー。77年の『幸福の黄色いハンカチ』で、日本アカデミー賞助演女優賞をはじめ、同年の映画賞を総ナメに。79年の『もう頬づえはつかない』では、キネマ旬報賞・主演女優賞、毎日映画コンクール・女優演技賞など。その後も、88年の『TOMORROW/明日』でキネマ旬報の主演女優賞、97年『東京夜曲』ではブルーリボン賞、毎日映画コンクールなどで主演女優賞、またベルリン国際映画祭でNETPAC賞など、多数の賞を受賞している。  その他の主な出演作は、『僕は天使ぢゃないよ』『夕暮まで』『疑惑』『木村家の人びと』『異邦人たち』『IZO』など。また、2005年の『太陽』やハリウッド大作『SAYURI』をはじめ、『イエロー・ハンカチーフ』『雨夜 香港コンフィデンシャル』『Greater Things』『フクシマ・モナムール』『ゴースト・イン・ザ・シェル』など、近年は海外作品にも多数出演。06年には自ら脚本を手がけた初監督作品『無花果の顔』を発表し、世界11の国際映画祭に正式招待されたほか、ベルリン国際映画祭のNETPAC賞を含め7つの賞を獲得。16年公開の監督第2作『火 Hee』は、ベルリン映画祭、香港映画祭、ウラジオストク国際映画祭、サンパウロ映画祭など世界各国の映画祭で上映されている。

 

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