2019年8月29日
その鋭い眼光から悪役を演じることも多い遠藤憲一氏。だが、制作現場を、そして視聴者を魅了する存在感は圧倒的で、最近はシリアスやコメディ、ハートフルドラマなどにも引っ張りだこだ。
今月3日から始まった新作ドラマ『それぞれの断崖』でも、極めて複雑な立場に置かれた父親役という難役を好演中。番組プロデューサーが惚れ込み、スケジュール調整を1年も待ったという甲斐あって、特異なストーリーとともにさっそく評判を呼んでいる。
今回は「大人の街・銀座」をテーマに、現代の「渋い大人」像を体現する遠藤氏を訪ね、銀座談義がてら新作についてのお話を伺った。
|遠藤さんは、銀座エリアに個人的な想い出などはありますか?
中学生の頃、とある生放送番組をよく観ていたのですが、CMに入る時に和光ビルの映像が流れたんです。「俺たちも映ろうぜ」ということで友だちと出かけたのですが、カメラがどこにあるのか分からなくて(笑)。あとは、もう20年くらい前に閉館した映画館なのですが、若い頃は小津安二郎監督や溝口健二郎監督の作品を観るためにに「並木座」によく通いました。懐かしいな。
|遠藤さんは品川区のお生まれですから、銀座も身近ですよね。
でも、特別な街という印象の方が強いかな。特に、大人として経験を重ねるうちに「やはり違うな」と思うようになりました。
|何か「銀座の特別感」に気付いたご経験が?
長年の友人が老舗の寿司店で働いていましてね。凄い著名人がお忍びで通う店らしいのですが、詳細は絶対に教えてくれないんです。味はもちろんですが、姿勢の面でも銀座の一流店は違うんだなあ、と。
|遠藤さんに憧れる男性は多いかと思いますが、逆に遠藤さんが憧れる「大人の男性像」は?
ご評価いただいているなら嬉しいのですが、こう見えて、とても心配性でしてね。日常生活でも芝居でも「ダメ出し」に弱くて。なぜダメなのかを自分でも理解できた時は、落ち込みまくります。だから心が強い方は尊敬しますね。
|いま放送中の主演ドラマでは、息子を殺された「被害者の父」でありながら「加害者の母」への愛情も生まれるという複雑な役柄を演じておられます。脚本を読んだ感想は?
たじろぎました(笑)。でも、難役はこれまでにも乗り越えてきたので、また新しいハードルに挑戦するのもいいなと思ってお引き受けしました。
|聞いただけでも難しそうな役ですよね。
そうですね。心情の変化を細かく表現しなければならないので、現場では「映し方」の打ち合わせを重ねました。俺、すぐ攻撃的な顔になるので(笑)。
|主人公の人間像はどう捉えていますか?
もし自分が同じ境遇に置かれても、きっとこうはならない。でも、同じ痛みの中にいる加害者の母を想う気持ちは、単なる憎しみでも恋愛でもない人間的な心情ですよね。特に、ほっとけなくて近づいていく過程の部分については、とにかく丁寧に演じるよう心がけています。
|プロデューサーの方は、遠藤さんのスケジュールが空くのを1年も待ったそうですね。まさに惚れ込んだということですよね。
嬉しいお話ですが、責任も重大で(笑)。重いテーマながら、撮影現場は意外に明るい雰囲気で、皆さんに助けていただいています。本作はヒューマンサスペンスの要素もあるので、登場人物と一緒にハラハラ感を楽しんでいただければ。まずは気軽に「覗き見」してほしいですね。
2019年8月3日(土)~9月21日(土) <全8話>
毎週土曜日/23時40分~24時35分 東海テレビ・フジテレビ系全国ネット
社会派ミステリーの名手・小杉健治の同名小説を基にドラマ化。少年事件の被害者の父と加害者の母が恋におちるという“禁断の愛”を描き話題を呼んでいる。2人の恋の行方は?崩壊した家族の絆は復活するのかー。本格的なラブシーンは初!という遠藤の演技にも注目だ。
【原作】小杉健治「それぞれの断崖」
【出演】遠藤憲一 田中美里/田中美佐子
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2024年10月25日 発行
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