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激動の時代を生きた女の人生に大竹しのぶが再び挑む

激動の時代を生きた女の人生に大竹しのぶが再び挑む

2022年9月30日 PR

COVER INTERVIEW
大竹 しのぶ
SHINOBU OTAKE

日本演劇史に燦然と輝く不朽の名作『女の一生』は、名優・杉村春子さんが生涯にわたって演じ続けた代表作。そしてこの度、2020年に主人公・布引けいを演じた大竹しのぶさん(以下敬称略)が再び挑むこととなった。11月に博多座での初上演を控え、初演で感じたことを振り返りながら本作品への思いを語ってくれた。

― 2020年に初めて演じられた際の感想をお聞かせください。

大竹 杉村春子さんの初演時は戦争真っただ中で、空襲警報が鳴っては中断しながら上演を続けたそうです。その状況が今のコロナ禍と重なって、「それでも幕を開けたい」という杉村さんたちの思いがすごく分かりましたし、私たちも芝居をみんなに観せたいという思いでした。一回一回の公演、一人ひとりのお客さまを本当に大事にしなくてはいけないと強く思った公演でした。

―布引けいを、どんな人物像だと捉えていますか?

大竹 「誰が選んでくれたのでもない。自分で選んで歩きだした道ですもの」という有名なセリフがあるのですが、女って強いなと思いますね。必死になって生きて、最期に「これでよかったんだ」と思おうとする人生。そして、そう思えるというのが……。みんなそうだと思いますが、私も自分で一つひとつを選択しながら生きてきたので。幅広い年齢の方が共感できるんじゃないかな。

― 印象的なセリフが多いですが、心掛けていることは?

大竹 「ここは聞かせるところだよ」と意識するのではなくて、みんなの心にスーッと入っていくようにしたいですね。それにはやはり、布引けいという女性をちゃんと演じることが大切だと思っています。杉村春子さんが何度も演じ続けたように、やればやるほどもっと深く演じたいと思う気持ちは役者としてよく分かります。それくらい良い戯曲なので、しっかりと役と向き合いたいです。

― ほかにも心に残るようなシーンはありますか?

大竹 終戦後に自分の人生を振り返って、「私の一生はこれからという気もしているんです。(子どもたちの行く末を見守りながら)これから始まる新しい歴史の中に私の一生も入れていただこうと思うのです」と語るシーンです。次の未来につながる場面に立ち会うことを喜び、晩年になっても未来のことを考えられる布引けいは、本当に強い女性だなと思います。

―本作品では、政治や世の中のことも描かれていますね。

大竹 はい。生活の中に政治が関わってきているし、戦争も描かれています。それが今この時代に上演されることは意義があると思います。当時の人々は国が今どういう状況なのか理
解し、自分がどう生きるべきかを考えなければなりませんでした。作者の森本薫さんが仰りたかったことをきちんと伝えたいですね。

大竹 段田さんは本当にお芝居が好きな方です。稽古中はもちろん、公演期間に入っても「ここのセリフはこうだよね」などと言い合える役者仲間の一人で、信頼を置いています。演出はのらりくらりとしながら( 笑)、ダメ出しもはっきり言ってくれます。

― 本作品が長い間愛される理由は何だと思いますか?

大竹 布引けいという女性は、自分の思い通りの人生ではないかもしれないけれど、決して自分を曲げないで生きていたと思います。与えられた状況を
受け入れながらも強く生きて、後悔しない道を常に歩もうと努力していた人です。だから余計に寂しいし、悲しい部分もあります。一生懸命に生きること、自分の考えを把握して生き
ることがいかに大事なのかを考えさせられます。

― 読者に向けてメッセージをお願いします。

大竹 明治・大正・昭和と3つの時代を生きた、布引けいという女性の一生を演じます。歳を重ねる、時代を生きるってこういうことなんだというのを、観てもらえたらと思います。『女の一生』には宝石のようなセリフが散りばめられていて、どの年代の方も心に残る作品です。ぜひ劇場でお会いしましょう。

大竹しのぶ[ おおたけしのぶ ]
1975年、映画『青春の門 – 筑豊編-』ヒロイン役で本格デビュー。同年、朝の連続テレビ小説『水色の時』出演で国民的ヒロインに。気鋭の舞台演出家、映画監督の作品に欠かせない女優として、数々の話題作に出演している。「博多座」への出演は、2019年『三婆』、2022年『ピアフ』に続き、3度目となる。また出演映画『ヘルドッグス』が9月16日に全国公開。

BI Z T H EATER / HAKATAZA

不朽の名作『女の一生』が博多座で待望の初上演

終戦直前の1945(昭和20)年4月に森本薫が文学座に書き下ろし、杉村春子が生涯947回にわたり主人公の布引けいを演じた日本演劇を代表する『女の一生』。2020年には段田安則の演出で大竹しのぶが初演を果たし、魂を込めた演技が多くの観客の心を打った。そして、たくさん寄せられた声に応え、待望の再演が決定。博多座では、満を持しての初上演となる。
主人公のけいは、日露戦争で孤児となり、裕福な貿易商・堤家に迷い込む。けいの運命を変えていく堤家の面々には、次男の堤栄二に高橋克実、長男の堤伸太郎に段田安則、長女の堤聡子に西尾まり、次女の堤ふみに大和田美帆、女主人の堤しずに銀粉蝶、そして叔父の堤章介に風間杜夫という豪華実力派キャストが集結。太平洋戦争に突入していく日本の様相が堤家に凝縮されており、また、堤家の人々が個性豊かに現実感をもって造形されているのが大きな魅力の一つ。
戦争やコロナ禍など、奇しくも現代の不安定な世界情勢がリンクする本作品。そして各所に散りばめられる名セリフの数々。幾度となく困難な壁が立ちはだかりながら、それでもたくましく生きてゆく主人公の姿には、令和を生きる私たちの胸に訴えかけてくるものがあるに違いない。これまでも、海外の古典から日本の現代劇まで、数々の舞台で登場人物を生き生きと表現してきた大竹しのぶ。初演から回数を重ね、少女から晩年まで布引けいの心情の変化をどのように演じるのか期待が高まる。(敬称略)

STORY
女の一生
1905(明治38)年、日露戦争の後―。清国との貿易で一家を成した堤家は当主を亡くし、妻のしずが義弟・章介と共に困難な時代を生きていた。戦災孤児の布引けいが、不思議な縁から堤家の人となったのはそんな頃。次男・栄二(高橋克実)とお互いにほのかな恋心を抱くけいの思慕とは裏腹に、しずはけいを長男・伸太郎(段田安則)の嫁に迎えて堤家を支えてもらうことを望んだ。しずの恩義に抗しきれなかったけいは伸太郎の妻となり、しずに代わって家の柱となっていく。そして時は流れて1945(昭和20)年。焼け跡の廃墟に佇むけいの前に、栄二が再び戻ってきて……。


博多座
[演目]女の一生
[出演]大竹しのぶ/高橋克実、段田安則、銀粉蝶、風間杜夫/西尾まり、大和田美帆、森田涼花、林翔太
[公演期間]2022年11月18日(金)~11月30日(水) [開催場所]博多座(福岡市博多区下川端町2-1)
[チケットのご予約・お問い合わせ]092-263-5555
[座席料金]A席13,500円 / 特B席10,000円 / B席7,000円 / C席4,000円
[HP]https://www.hakataza.co.jp/

 

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